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新英語教育研究会神奈川支部HP

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2009.5 会報161:新指導要領下での高校英語

2009年5月春の1日研修会(会報161)
●実践報告(高校):「4技能の力をバランスよく育成するために
~新指導要領下での高校英語の授業はこうなる!~」
萩原 一郎さん(県立城郷高校)
この会報を書くのは発表の4ヶ月以上後になってしまっていますが、萩原先生のワークショップで音読練習したIreland is a green country.という文やオーラル・イントロダクションで見せていただいたレッスン内容がしっかり私の中に残っています。巧みな「授業の作り方」、そして『波及効果』を考えたテストづくりも参考になさってください。

(1)萩原先生
・ レポーターから:「英語の授業は英語で」とする高校の新指導要領が告示されました。訳読して終わってしまう高校英語の授業。読む・書く・聞く・話すの4技能をどうしたら高めることができるか、ワークショップ形式で体験していただきます。
・ 城郷(しろさと)高校:2009年に赴任。習塾度と共通テストを初体験。

(2)授業
・ 英語授業のパタンを作る:「A先生の授業はこれから始まる」というパタンを作るのは重要。しかし、「使える活動」「楽しい活動」(このゲーム、あのゲーム…)を組み合わせても授業にはならない。
・ 高校英語Iの授業:授業が予習チェックの時間になっていないか? 難しめの教科書で生徒はアップアップ状態で、「本文の理解が中心」(説明、文法、日本語訳して音読数回…)になりがち。その先を考えたい!  すなわち、input(oral introduction)から、intake(音読、read and look up、和訳対訳シート)へ、output(story retelling, summary writing)である。
・ 本文の導入はoral introductionで:「本文内容をほとんど扱う」「本文の一部を導入」「教科書にない背景知識を与える」などの方法がある。
★oral introductionの困難さを克服する:「絵や写真は教科書付属のCDROMやGoogleの画像検索などを利用」「文字はカードで用意する、あるいは導入しながら板書する」「板書プランはラフなものに」
★生徒が語るoral introductionの効用:「予習しなくても本文が分かる」「テスト中に授業内容を思い出せた」
・ 教科書本文の音読:リエゾン(音のつながり。Ireland is a green country。のis a「イザァ」を弧線でつなぐ)と消える音(What country ~?「ワァ カントゥリィ」のtが消える音なので、tを斜線で消す)の記号をつける。
「Chorus Reading」「教師が日本語、生徒は英語で言う」「Buzz Reading」「Pair Reading」「OverlappingでCDと一緒に読む」「Overlappingで2~3語遅れ=shadowingにつながる」「Individual Reading」「Individual Reading+つっこみ=Pardon?と言われたら繰り返す。またはWhere is Ireland?のような疑問文を挟む」「Read and Look up=1度読んでそのあとlook upと言って、顔を上げて教科書を見ないで言うという2度読みのやり方にすると取り組みやすい」「対面リピート」「あなたも通訳者」「Cloze reading=穴埋めプリントを配布」
★空(から)読みにしないためには飽きないように日本語を入れるとよい。いつの間にか英語が残っていたというのが理想。
・ story retelling(story reproduction):「スピーキングシート」を使って話す。全体、個人、ペアで練習し、キーワードや絵を指差ししながら話すことを励行する。言えたものを5回程度書いてみる。summary writingにつなげる。プリントで共有し、仲間の作品に学んで、質を上げていく。
・ 家庭学習での「自学ノート」の取り組み:単語練習、対訳シートを見ながら英語で書く、文法の参考書(Harvest)の問題をする、その他に自由に英語の歌詞を書いたりするノート。3冊提出した生徒もいる。「授業ノート」は授業で使用。
・ 定期試験の「波及効果」を意識する:試験問題の出し方によって生徒がどういう学習をするか定まる。つまり和訳問題を出せば、英語ではなく日本語を暗記する生徒になってしまうということ。
出題例1:和文英訳「次の日本語を英語に直しなさい。教科書どおりである必要はありません」(対訳シートの一部を出題)
出題例2:読解「この文章には以下の7つの単語(1) ability, (2) cartoonsなどが抜かれています。もともとあった位置の直前の語と直後の語を答えなさい。
答え:He sent some to the editors of the yearbook.ならsomeのあとにcartoonsが抜けているのでsomeとtoを答える。
出題例3:ライティング「チャーリーブラウンについて以下のキーワード(a character, shyなど10の表現)を使って英語で説明しなさい。基本的に英文の量が多いほど得点が高くなります(10点)
出題例4:以下のa,bの英文は文章のどこに入れると良いか。文章の1~6の番号で答えなさい。(a) And he was asked to send more. (b) Then he was sent to Europe two years later to fight in World War two.(このような出題にすれば和訳を丸暗記するようにはならない)
★生徒の感想:英文を音読する練習をして「英語を文字として覚えるだけでなく、音として覚えることができた」「話す力がつく」「英文を読むだけで、次にtoやforなど何が来るかわかるようになった」、授業ノートや自学ノートで「提出をするのでより練習する。テストの前などにページ数などでどれだけやったかがわかる」「中学よりテストの点が大幅にアップした」「授業中は単語の書き取りがあまりできなかったが、自学ノートで復習できるのでよい」、ライティングシートは「文の構成などを学ぶことができた」「自分でも何文か書けるようになったことがうれしかった」「難しくてできません!」
生徒の感想で、英語力を高める上で役に立ったものの上位から「単語シート」「日英対訳シート」「教科書の音読」「自学ノートでの練習」「ライティングシート」。やってたのしかったものは「英語の歌」「ペア練習」「辞書引きテスト」など。

(3)質疑応答
・ Q:音読シートをやっている。生徒は声が出る。和訳はするか? または不要か?
A:「文の初めが動詞で始まっている。命令文だ」「much warmerは?」「Itは何を指すか?」のように確認していく。
Q:大学の授業でも和訳していた。構文をとる能力が高まるのではないか? 自分が拘泥するのは文学が好きだからかも知れない。
A:『アリス』を訳させて翻訳家の文と比較させたことがある。ふだんは一部だけ和訳させたり、SVOをとったりする。
・ Q:初見の英文に生徒は弱い気がする。手をかけすぎると担当が変わるとダメになることがある。「指さし」の大切さは今日初めて知った。
A:「指さし」は語研のブックレットでも薦めている。初見の英文に強くなるように多読プログラムをしている。高1の4月に「中学でどの教科書を使ったか」アンケートを採るとよい。読んでいない中学教科書を読ませる。

■参加者の感想
? story telling ( story reproduction )から、Summary writing への活動がとても参考になりました。「スピーキングシート」を使って指差しをしながら相手に向かって話すという活動を取り入れてみようと思います。上級レベルの生徒にはsummary writing までやらせてみたいと思います。
? いつも目からうろこの授業です。Story for Reproduction は昔 Oxford Press のL.A.HILL を思い出しました。あれはかなりしつこいものでしたが…(笑)
格調の高い授業を有難うございました。Oral Introductionはとても参考になり、導入したいと思います。
? 読みのさせ方、負荷=アイデイアを持った読ませ方、やってみます。
? 教科書の説明をどれだけ行い、音読やRetelling の時間をどれだけ確保するかが、ポイントのような記がします。
? 萩原先生の授業実践を見るのは2回目になる。日々の自分の授業の中で、生徒が自分で英語を発話し外国語の意味が自身の血肉化し、音としての英語が理解でき、読め話せるようになるためには、やはり音読から始まる授業が、マスプロ教育の中では最良かもしれないと思った。
? 私も萩原先生と似たような形で音読授業をしております。(私は音読中心の授業です。)しかし、他の教員から「文法の力がつかない」とか「受験に対応できない」などといわれる事もあります。けど生徒のニーズは、英語が英語らしい発音で話せること、が多いです。まずは、こちら側が何を教えるかより、生徒が生き生き取り組める授業作りを目指すことの方が私は大切だと思います。
? 憧れの授業ですがなかなか自分では難しい面もあります。授業‐テストは今後の授業つくりの示唆になりました。
? 萩原先生のoral introductionはとても良かったです。中学と高校はいろいろ違いますね。参考になりました。6月7日は楽しみにしています。
? 私は実際に先生のような授業を受けていたのでとても親しみがありました。一つひとつの教育方法が実際の4技能にどのように結びつくのかを認識しながら内容研究をしていくことの大切さを感じました。
? 遅刻したため申し訳ありません。入室し、大好きなアイルランドの地図があったので、とてもうれしかったです。大変お世話になりました。ありがとうございました。



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